巻頭言1999

病院統廃合、行政改革の波1999年)

 

政府の行政改革の一環として公立病院の統廃合が加速化されてきた。最も早くからその再編成計画が策定された国立病院・療養所については、昭和61年度当時の239施設から、統合によって40施設、民間移譲によって34施設計74施設を減らし、165施設にする計画であった。当初は、地元自治体等の理解を得る事に時間もかかり、移譲の引受先が見つからないなどで遅々として計画は進まなかったが、再編成計画公表以来の10年余を経て、その進捗は加速化され、平成10年度末までに26施設が減少した。当初、再編成計画の目的は「国立医療機関にふさわしい広域を対象とした高度叉は専門医療を担えるよう、機能の質的強化を図る」であったが、平成10年に再編成計画の見直しがなされ、「国の政策医療として行うこととされてきた医療について、真に国として担うべきものに特化するため、政策医療の範囲を純化する」と、明文化され、先駆的な医療や難治性疾病等に関する診断・治療技術等の機能強化を図る必要のある19分野を政策医療分野として指定した。兵庫県下においても平成9年10月に国立篠山病院が兵庫医大へ移譲され、平成1112月に国立明石病院岩屋分院が民間の聖隷淡路病院として再出発する。国立神戸病院と国立明石病院は神戸で統合され、国立加古川病院と共に民間移譲の方針が出されている。国立が最も信頼できる組織であると信じて働いてきた人々にとっては青天霹靂の状況が生まれてきているが、日本全国に蔓延していた「親方、日の丸」的な発想や行動を見直さざるを得ない時期になってきたと言えよう。

 行革の波は国立大学にも及び、今後約10年間をかけてすべての国立大学を独立行政法人にすることが決定された。国立大学が国家行政組織の一部にとどまる限り、文部大臣の広範な指揮監督権が及ぶため、大学の自主性・自律性と自己責任には自ら限界があることから、国立大学に独立した法人格を持たせることによってできる限り自らの権限と責任において大学運営をさせようという意向である。法人化された場合には、教育研究組織について大学が主体的に決定、変更、改廃することが可能となり、教職員定員数も総定員法等の決定定員制度の対象外となるため各大学において機能的な教職員配置が可能となり、また給与が給与法等の適用の対象外となり各大学で給与の支給基準を定めることができるため教職員の業績等に応じた弾力的給与決定も可能、さらに国からの運営費交付金は使途の内訳を特定しないことによって予算執行上の制約がなくなり教育研究活動の実態に応じた弾力的な予算執行が可能になると唱われている。一方で、各大学の自主性、自律性が拡大すれば、それに伴い、各大学の運営責任も当然重くなりますよ、というかなりのプレッシャーも国はかけてきている。

 しかし、教育の現場に居る者からすれば、学術や教育といった非生産的ではあるが日本の将来に大きく影響を与えうる領域への投資が欧米諸国にくらべて著しく低い我国の状況を鑑みる時、独立行政法人化は独立採算性をそれぞれの大学に結果として押しつけることになり、我国の将来にとってもっとも重要な部分にしわ寄せがいくのではないかという懸念を捨てきれない。大学に対する十分な公的資金の投入があって始めて国が期待するような大学の個性的な発展が望めるのであるが、そのような資金が十分にこない場合も想定して財政的な基盤の充実のために神戸大学も全学部を挙げて積極的な努力を払うことが必要であろう。欧米の超一流といわれる多くの大学が、永年にわたって築きあげた巨額の基金によって安定した活発な教育研究活動を展開していることは広く知られている。

 「親方、日の丸」的な考えや会社への永久就職という雇用形態が否定された現在、個々人から組織まで、生き残りをかけて競争を強いられる、考え方によっては、多くのチャンスに恵まれた時代、しかし反面なかなか安定感を得られない不安な時代に突入したと言える。同門の方々もお互いにアイデアを交換しながら、持ちつ持たれつの関係を維持しながら、それぞれ置かれた状況で切磋琢磨して夢を実現して頂きたいと願うところである。

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