巻頭言2003

卒後臨床研修必修化2003年)

 

 平成16年度から始まる事後臨床研修必修化に先立ち平成15年夏から秋にかけて、研修医候補者と受入研修病院の全国レベルのマッチングが初めて行われた。参加者8283名に対し提示された研修プログラム1076、参加病院数は851で行われた結果、組み合わせが決まった参加者数は7756名(マッチ率95.6%)、組み合わせが決まらなかった参加者数は353名のみであり、多くの問題が指摘され不安要素を抱えながらのスタートであったが、予想以上にうまくいったと厚労省関係者は大喜びと聞いている。また大学病院から医師を外の病院に出したいと考えている厚労省の意向通り、マッチング参加者のうち厚労省指定臨床研修病院での研修予定者が41.2%、大学病院での研修予定者が58.8%とその割合は大きく変わった(従来は、大学病院で研修をする者が7580%、市中病院へ行く者は2520%であった)。さらに、今までだと大学を卒業した新研修医のほとんどは、研修を大学病院内あるいは外病院で開始するにかかわらず、大学の何れかの医局に所属してから研修を開始していたので、研修医から一人前の医師になるまでのプロセスに大学医局が深く関与できたが、新しい制度では研修医は自分の所属を決めないままに研修生活に入り、自分の考えや目標で次のステップに進むことになる。前述のように大学病院で研修生活を開始する研修医数の激減を併せて考えると、研修医ひいては医師の大学離れが一挙に進むものと想像される。

 このような時代の流れの中で医師の人事についても変革期にさしかかっている。現在、全国自治体病院協議会に加入している自治体病院は約1000あり、そこで働く医師の90%以上は大学から紹介、派遣されてきているが、その協議会会長は、近い将来医師の確保について大学医局に頼らないシステムを作りたいと公的に発言している。具体的には、例えば県が一括して全国から医師を公募して採用し、県内の県立や市町村立の病院に勤務・異動させるといったもので、今まで大学医局が行ってきたことを県が行うことをイメージしている。現に、足下の兵庫県では、平成16年度からのマッチングによる卒後臨床研修制度に合わせて、県立病院それぞれが研修医を募集するのでなく、県立病院群として研修医を確保し、2年間の研修後にはさらに3年間の専攻医あるいはレジデント制をひいて医師を独自で育てる動きがある。私個人は、このような流れに水を差すつもりはない。今まで再三再四言われてきたこと、たとえば自治体病院で必要とする人材を大学は育ててくれないとか、専門特化し過ぎた片輪医師しか送ってこないという問題は解決されていくかも知れない。しかし、この方向が順調に進み自治体が医師の確保を出来るようになった時、現在の大学医局制度で指摘されているような問題点や弊害を自治体が繰り返すようなことはして欲しくはない。

 日本国民のため医療のレベルを上げ、一方では医学を国際的なレベルで発展させるために、医学生そして研修医、若い医学徒をどの様に教育し指導していけばよいのか、我々は常にその原点を見つめ続けるべきだと思う。医学部を卒業して医師になって数年間の教育・指導ほどその若手医師の将来を左右するものはなく、最も重要な時期の指導が大学から市中病院へ移ろうとしている。大学病院・医学系研究科に働く医師・医学研究者は、医学生の教育に加えて、常に自分たちの専門領域の最先端で未解決の問題をブレイクスルーするために必死で努力して欲しいと思う。自治体病院では、地域密着型の実地診療と若い医師の育成が目標となる。民間私立病院では、若手医師を育てながら、しかし患者さん中心の患者さんのための医療に主眼が置かれ、利潤を追求しながらの企業的な経営が課せられる。

 同門の先生方にお願いしたいことは、市中病院において先生方の指導で研修を開始する研修医達に、是非、医学・医療の色々な世界を話してあげてほしい。今まで以上に、大学病院と市中病院の医師同士が、お互いに情報を交換しながら前向きに取り組む必要があると思うこの頃である。

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