巻頭言2005

大学間競争熾烈化2005年)

 

 平成16年4月に神戸大学が国立大学から大学法人になって1年半が経った。大学全体に漂っていたいわゆる"親方日の丸的な体質"が完全に払拭されたわけではないが、目標設定から立案、実行、評価、そして反省といった流れが色々な場面で遂行されるようになってきた。神戸大学医学部執行部に医学科長として入って4年目になるが、神戸大学の将来像をイメージしながら、どのように対応すれば今の流れから取り残されずに大学として生き残れるのかを常に考えなければならない日々が続いており、気の休まる時がない。将来に対する不安感と焦燥感から、現執行部はやれることは後回しにせず全て実行していくという方針のもとに、トップダウン方式で一丸となって突き進んできている。平成13年4月の大学院講座化に始まり、平成14年度バイオメディカルサイエンス修士課程の発足、平成15年度文部科学省21世紀COEプログラム「糖尿病をモデルとしたシグナル伝達病拠点」の採択、さらに今年度は文部科学省「地域医療等社会的ニーズに対応した医療人教育支援プログラム」に「総合病床でのクリニカルエデュケーター養成:大学病院における卒後臨床研修改革と新たな専門医養成への試み」が採択され、さらに続いて「魅力ある大学院教育イニシアティブ」に「生命医科学リサーチリーダー育成プログラム」も採択された。文部科学省は、国が支給する運営交付金を年毎に縮小し、減らした分を競争的資金として各大学に競わせ、良いプロジェクトを申請した大学に配分するという方針をとっている。このような状況の中で神戸大学大学院医学系研究科の外部資金獲得額は少しずつ増加しているが、さらに飛躍するためには次の時代を見通して新しい取り組みが必要である。

 一方、極めて深刻な問題は、研修医や若手医師の大学離れに拍車がかかってきている現実だ。いつも例として出す卒後臨床研修制度における研修医のマッチ率だが、3回目を数える今回は現在のところ神戸大学病院80名募集の内66名(82.5%)しかマッチしておらず、大幅な定員割れになりそうだ。クリニカルエデュケーターや生命医科学リサーチリーダーを育成するプロジェクトで外部資金を獲得しているのに、そのプログラムに乗せたい若手医師・研究者が大学にいないという事態は避けなければならない。大学離れがより顕著な診療科は、かつて多数の入局者を受け入れていた所謂メジャーの内科と外科であり、マイナーの診療科の場合は、大学の専門医養成コースを選ぶ若手医師の数が以前と変わらないか或いはやや増えている傾向さえある。結局のところ、突き詰めてみると、内科および外科が研修医や若手医師にとって魅力的なものに変われるかどうかが鍵を握っているようだ。かつて取りあえず内科に籍を置いて、患者を診察し臨床を勉強しながらその過程で基礎医学に目覚めた若手内科医も数多くいた。若手にモラトリアム人間が増えている今日、自分が医師或いは医学研究者として何を本当にやりたいのかを決定する卒後5年前後に大学に在籍して、指導者と出会い、先達の生き様を目の当たりにし、色々な情報のなかで熟考する機会をできるだけ多くの若手医師に与えてあげたいと心より思う。そのために内科をどのように変えていけばよいか、色々とアイデアを練っている。

 今年は、大変嬉しいニュースもあった。今春の叙勲で、初代教授の井村裕夫先生が瑞宝大綬賞受章の栄に浴された。7月29日には記念の講演会と祝賀会が盛大に開催され、三緑会を代表して吉本祥生先生より横山大観作木版画「不二霊峰」が贈呈された。また、来年は、2月に第16回日本間脳下垂体腫瘍学会、5月に第79回日本内分泌学会学術総会、11月に7th International Congress of GRS-IGF 2006 KOBEの会長あるいはChairmanを引き受けている。いずれも国際会議場およびポートピアホテルで開催を予定しており、内分泌内科のメンバーを中心に着々と準備を進めてくれている。

リンクページ